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2019年総括。令和元年、激動の暗号資産業界

今年の暗号資産業界も様々な出来事があった。その中でも「暗号資産冬の時代」と呼ばれた、市場の停滞期を脱したことはかなり大きな出来事であったと言えるだろう。
今年の3月末までは38万円〜43万円を推移していたビットコイン。それが4月に入ると一変、55万円ほどまで一気に価格を上げると、そこからさらに急上昇して6月には最大150万円まで到達した。
アルトコイン価格もこの時期に今年の最高値を記録したものが多く、市場からは暗号資産価格が軒並みどこまで上がるのかといった期待感が充満していたと断言していいだろう。
その後は徐々に価格を下げ、「再び冬の時代に突入するのではないか」と匂わす展開が何度も起きた。しかし今年の市場はやはり一足違い、ズルズルと下に引っ張られるだけではなく、しっかりと要所でサポートが働き値を戻すといった展開が度々見られた。これもユーザーが抱く価格上昇への期待がもたらした結果だろう。
もしかしたら、一度200万円以上にまで上昇したビットコインの底はすでに3月頃に打たれていたのかもしれない。
今年の暗号資産業界を象徴する重要トピックとして忘れてはならないのが、世界規模のSNS・Facebookが主導する独自暗号資産「Libra」だ。
昨年から独自暗号資産に関する存在は度々噂されており、ローンチ秒読みとまでされていたLibraプロジェクトは、良くも悪くも暗号資産業界に多くの影響をもたらした。
しかし発表直後、「Libraが流通することで各国の経済圏を脅かす」「マネーロンダリング(AML)などに用いられるリスクがある」などといった声が多数挙がり、批判の的になった。
また、米連邦議会などで特に疑問視されたのは「ユーザーのプライバシー保護をどのように行うのか」といった問題だ。これは2018年に起きたFacebookユーザーおよそ5000万人分の個人情報流出事件が背景にあるものと見られている。
FacebookのザッカーバーグCEOは、「米連邦議会の承認を得るまでLibraのローンチは行わない」と断言。米連邦議会側も懸念点が払拭できない限りLibraを認めることはないといった態度を示していることから、ローンチまでの道のりは極めて険しいと言えそうだ。
もう1つ暗号資産業界に影響を与えた出来事と言えば、やはり中国の習近平国家主席によるブロックチェーン推進発言だろう。
習主席の一言で、中国国内では一気にブロックチェーンというワードが浸透。大企業を始め、金融機関もブロックチェーンを用いたシステムを検討・導入し始めた。
この一報が知れ渡ると暗号資産市場も反応。ビットコインを始め、暗号資産価格は軒並み急騰した。特に中国系の暗号資産が活発に動き、賑わいを見せた格好だ。
しかし、中国当局が暗号資産関連事業の取り締まりを強化した際には、相場は瞬く間に下落。結果、10月〜11月は中国情勢に左右されることとなった。
また中国は現在、デジタル人民元の発行準備を急ピッチで進めており、ついに実証実験の段階にまでステージを上げた。
このデジタル人民元の発行時期は具体的になっていないものの、実証実験次第では早くて 2020年春頃、遅くても秋頃になるのではないかと見られている。
中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)において後手を踏むアメリカや日本などよりも先にこの分野を推し進めていることから、世界金融の覇権取りに向けた中国の本気度が伺える。
中国国内でのブロックチェーン実装とデジタル通貨の動向に関しては、来年も暗号資産業界に影響を与える可能性があるため、引き続き注視した方が良さそうだ。
2019年の暗号資産業界を表すとするならば、「兵馬倥偬(へいばこうそう)」ではないかと考える。
意味は「戦乱で慌ただしい。忙しい」といったもので、2019年の暗号資産業界は相場の変動だけでなく、既出したLibraやデジタル人民元の動きなどで非常に慌ただしくなった印象だ。
加えて、来年はCBDCや、株式・不動産などを有価証券として位置付けたトークン販売で資金調達を行うSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)が台頭する年になる可能性がある。2019年はその動きを加速させた年で、資産の「デジタル化」に関する覇権争いを拡大させたと言っても過言ではない。
2020年、元号が変わって2年目となる来年は、暗号資産業界の行く末を左右する年になりそうだ。