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日本暗号資産ビジネス協会、暗号資産のユースケースの有用性を中間報告

一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(以下、JCBA)は7日、「暗号資産のユースケースに係るディスカッションペーパー 中間報告書」を公表した。

この報告書は、ビットコインを始めとする暗号資産(仮想通貨)のユースケースの提示を通じ、投機目的以外の多様な有用性の側面について、理解の促進を目指すために設立したユースケース部会にて取りまとめられた。

JCBAは2016年に金融機関の知見を集約し、日本国内における暗号資産ビジネスの健全な発展を目指して、金融機関を中心に発足。現在、ビットバンク、QUOINE、SBI VCトレード、コインチェック、楽天ウォレット、bitFlyerなど、4月1日時点で計100社が加入している。

今回の報告書では、海外と比較し日本国内における暗号資産事業の法整備等の課題が取り上げられた。

2020年以降、海外では暗号資産業界に多数の機関投資家が参入した。具体的な例としてマイクロストラテジー社や、テスラ社、スクエア社などがビットコインへ多額の投資を行っていることを報告。また、資産価値の保全(インフレヘッジ)のために保有する法定通貨の一部をビットコインに変える企業も増加していることを指摘した。

しかし、企業や機関投資家が多額の暗号資産を自社で管理することは難しく、カストディサービスの利用は不可欠であるとした。

日本においては現実的に信託銀行でないと機関投資家は暗号資産の現物を預けることができないが、厳格な規制もあり信託銀行が暗号資産の管理をすることは実態として行われていないとし、企業や機関投資家の暗号資産投資が進んでいないことを報告した。

また暗号資産決済について、米PayPalの暗号資産取り扱いを取り上げ、海外では進捗しているものの、日本では国内の法規制上、暗号資産を管理する暗号資産交換業者は顧客資産の95%以上をコールドウォレット等で保管することが求められていることも大きな課題となり得るとした。

日常の買い物目的の資金のみを預かる決済サービス業者は、チャージされた金額の5%までしか、ホットウォレット等の速やかに暗号資産を移転可能な状態に置くことができず、顧客資産の95%は支払い指図から数時間〜数日のタイムラグを置いてようやく移転可能なコールドウォレット等に保管されるため、支払サービスの普及における阻害要因になる可能性があると考えられると言及した。

また決済については、暗号資産の譲渡損益に対する課税の問題で、個人の場合、現状の雑所得としての課税では外貨建ての支払いと比較して税負担が重いことに加え、少額非課税制度がないと日常の買い物でも課税対象となるため利便性が低くなることを指摘した。

報告書には、暗号資産のユースケースの構想・アイデアも盛り込まれた。
その1つとして地方創生などの社会課題の解決に向けて、暗号資産を活用するユースケースについて考察した。

報告書では、暗号資産を特定の地域内の企業が不特定多数の投資家から資金を調達する手段として活用することを提案した。これまで地方企業は、必要な資金調達額が大きくないことから証券化等のスキームを組成する費用を負担しながら不特定多数の投資家から資金を集めることは難しかった。暗号資産を少額短期の資金ニーズに対して、数千円といった小口の投資資金を不特定多数から集めることによって資金調達を達成させるスキームに活用する。当該地域と関わりのある、または関心の高い利用者であるため、そこに向けて投資情報を発信することでより効率的に投資資金を集められる可能性を指摘した。

ただ、この構想で課題となるのは情報開示も含めた暗号資産の発行市場と流通市場の整備であることも付け加えた。

暗号資産取引所が新規の暗号資産を取扱うための手続きは非常にハードルが高く、安価に暗号資産を国内で発行することは困難であることが課題の1つとなる。また、発行後の「暗号資産」の流通市場も必要となるが、発行規模が小さく、投資持分も少額の暗号資産を効率よく移転させる流通市場を構築することはかなり困難ではある。こうした課題が解決すれば、暗号資産を地域活性化に活用する道が切り拓けていくものと考えられると指摘した。

なおユースケース部会はプレスリリースにおいて、今後は事例のアップデートやユースケース創出に向けた取組みの進捗状況を踏まえて最終版の公表を予定しているとし「本報告書のもと、税制改正要望のみならず、国内の暗号資産に関わるユースケースの拡大およびエコシステムの整備に向けて、各部会活動を行っていきます」と今後の抱負を述べた。

画像:Shutterstock