2023.02.06
みんなでWeb3の未来を創っていく─What`s「WeCreate3」
学生からWeb3とメタバースの認識を広げる
2023年1月20日(金)発売の月刊暗号資産3月号Vol.47より
国内の大学生によるWeb3&メタバースコミュニティ「WeCreate3」は、「学生側からWeb3とメタバースの認識を広げ、可能性を作る場を提供する」というコンセプトを掲げ活動を行う。
それぞれの大学ですでに独自の活動を行なっている複数の学生団体が集まり構成されるWeCreate3では、一体どのような経緯で創設され、どのような想いを秘めているのだろうか?
─WeCreate3とはどのような団体で、どのようなきっかけで発足された団体か教えてください。
井上進哉さん(以下、井上):WeCreate3は〝学生からWeb3・メタバースをマスに広めたい〟という思いと目的から活動を行っています。
団体発足のきっかけは、2022年7月にWeb3関連の学生コミュニティが集まったことでした。その時に、「各大学がバラバラに活動している」と感じました。TwitterなどのSNSで存在は知っていても、会ったこともなければ、どのような活動をしているのかも知らない。そうした背景から、まず関東圏のWeb3サークルの代表を集めて交流会を行い、そこで出会った雨蛙さんと意見が合致したこともあってWeCreate3の発足に至りました。
まだまだ学生の間でもWeb3の認知は不足していると感じています。だからこそ、学生からマスに向けて認識を広めていき、自分たちがWeb3やメタバースの未来を創っていく必要があると思ったことが大きいです。
雨蛙さん(以下、雨蛙):さまざまな大学・団体があり、本当にみんなバラバラに活動しているなと僕も感じていました。それに加えて、学生主導のイベントがなかなか少ないこともあって、みんなで集まって何か開催することはできないかと感じました。その後、2022年9月頃に初めてイベントを開催し、そこでの経験を踏まえた上で、みんなでWeCreate3を通じて共同の活動をしていくことになりました。
現在行われているWeb3関連のイベントは著名人を呼んだりして、業界内の話やブロックチェーンの技術的な話をしてもらうような形式が多いと思うのですが、もっと初心者に対して優しいイベントが必要だと思ったのも大きいです。まだWeb3やメタバースに触れたことのないような人でも楽しさや面白さ、発見があるイベントを開催したいと常に思っています。
─現在の活動の原動力になっているものはなんでしょうか?
井上:大きく2つあって、「焦り」と「可能性」です。
日々の大学生活でも感じることなのですが、Web3に関連した話を他の学生にしても、「聞いたことはあるけどよくわからない」という人がほとんどです。「NFT」や「ブロックチェーン」というワードを知っている人が思いのほか少ない現状をみて、一部にしか認知が広がっていないんだと気づきました。
また、ネットでWeb3やメタバースについて調べても稼ぎ方ばかり出ていて、日本のWeb3領域の現状を知り、自分の活動が金儲けのためと誤解されるかもしれないという現状も嫌だなと思いました。加えて、「世界は進んでいるのに日本はこんなに遅れて大丈夫?」ということも含め、焦りがあります。
一方で、Web3の将来を考えた際には可能性の詰まった領域だなと感じています。これまでの常識や情報技術の根本的な概念が変わり、すべてが生まれ変わるかもしれない瞬間を目にできる領域にすごく惹かれています。また、自分がWeb3の未来を創っていきたいという思いも強いです。
雨蛙:Web3など比較的新しい業界に関しては、世界中の誰もがリアルタイムで情報を追い、知識を持っているというわけではありません。まだ一部の層だけが知っていて、積極的に活動をしている段階であり、Web3に触れていない人たちに対して自分たちの活動をリーチできているとは思っていないです。そうした背景から、まだWeb3を知らない人にこの存在を知ってもらいたいという想いが原動力になっています。Web3関連の活動は誤解や偏見を持たれることもあるかとは思いますが、このような状況を学生のチカラで改善していきたいです。
団体発足のきっかけは〝各大学がバラバラに活動している〟こと。これまでの常識や根本的な技術概念が変わり全てが生まれ変わる瞬間を目にできる可能性に惹かれる。
─学生側からWeb3・メタバースの認知を広げる強みはなんでしょうか?
井上:「時間」と「熱量」がある点だと思います。学生は社会人と比べてお金はないかもしれませんが、Web3はまだ知らない人が多い領域で、現状はいつ参入しても大きなことを成し遂げることができるものだと思っていますし、時間と熱量があれば勝負することができるので、学生との相性が高いのではないかと考えています。
また、SNSなども発達している中で、現状やはり若者・学生が流行を作っていると考えています。世代によって感覚というのは変わってくるのでしょうが、その中でも若い人や学生がその時代に合った流行りを生み出していると思います。そういった概念のようなものはWeb3にもマッチしていると感じていますし、学生の考え方にあった形で発達していくのではないかなと思いますね。
例えばですが、将来的にもっと大学生や高校生などが日常的にNFTの話をしているような状況になれば、いよいよWeb3がマスに広がったなと感じられますし、より大きなムーブメントが起こせるような気もします。
雨蛙:僕も一度起業をした経験があるのですが、社会人の立場からみた時に、学生は特に「熱意」と新しいものに対する「勉強の意欲」が強いなと感じました。会社に入ると収益の見込みがないとなかなか動きにくい部分があるかと思うのですが、学生の場合は興味を持った物事に対して高いモチベーションで、自由な発想で取り組みを進めることができると思います。実際に何かを進める際にも、スピード感を持って挑戦することができますし、Web3やメタバースなどの領域ではこのような意識が大切だと感じますね。既存の考え方で何かあたらしいことをやる際にはやりにくさというものを感じる部分もありますが、縛られることなく意見を出し合ったりすることができる点はWeb3やメタバースなどのあたらしい業界の強みだと感じますし、学生の良さも活かせるかなと思っています。
─WeCreate3としてどのような情報発信を行うとWeb3・メタバースが馴染んでいくと思いますか?
井上:まずWeb3にお金が絡んでいるというイメージを払拭したいと考えています。日本人の特性上、どうしても金銭が関わってくると、危ない、詐欺だ、といったイメージが先行してしまう側面もあると思いますが、それでは入り口が狭くなってしまいます。
WeCreate3では体験を非常に重要視しているのですが、その中でNFTやメタバースの面白さなどを伝えていきたいです。そうした活動を通じて、Web3に対する誤解を解いていきたいですね。
雨蛙:どうしてもWeCreate3だけではWeb3・メタバースをより馴染み深いものにするのは難しいかとは思いますが、それでも我々ができることは全力で取り組んでいきます。その中でも、対面のイベントなどで一番大切なのは正しい情報・認識を伝えていくことだと思います。
現状は、初心者をターゲットに活動を行なっていますが、将来的にはいわゆる上級者やエンジニア向けイベントなども開催したいと考えています。すでに、国内外の企業様などからハッカソンの共同開催の話をいただいているので、こういったイベントの形も検討していきます。
─現状の日本が抱えるWeb3領域の課題とその解決策、そして2023年の展望について考えをお訊かせください。
井上:課題としては、よく言われている税制があげられるかと思います。プロダクトを作るWeb3起業家が、世界に活動の拠点を移してしまうというのは日本のコミュニティが育たない要因になってしまうと思いますし、結局海外に資本が流れてしまうのは少々もったいないような気もします。
また身の回りの課題ですと、マスに情報が行き届いていない、海外と比べて圧倒的に遅れているというところですね。ニューヨークの大学生とはWeb3の話ができるけど、日本ではまだわからない人が多いと感じましたし、全体的な知識の差があると思います。
マスに情報を届けるツールとしては、日本の強みであるIP(知的財産)を活かすことだと考えています。例えば、まだ触ったことがない人の参入障壁を下げるためにチケットをNFTにしてみるとか、トレーディングカードにしてみるなどの取り組みがいいのかなと。NFTもただ配って終わりというものではなくて、何か二次利用できるものであるといいのかなと思います。
2022年は大手暗号資産取引所FTXの破綻も含めてかなり荒れた年だったなという印象なのですが、日本は規制面で先行していたこともあり、海外に比べ影響が最小限に留まったのではないかと感じています。そのため、2023年に入り海外が規制強化等で動きが鈍くなっていくのに対し、日本はすでにある土台のもとで取り組みを進めることができるため、大きなチャンスを得られるのではないかと考えています。
NFTに関しても、日本は比較的NFTフレンドリーな国として知られていますし、先ほど触れたIPもあります。Web3の技術を使って価値あるNFTを生み出せれば、日本を代表するプロジェクトにもなりうるかと思います。
雨蛙:日本のWeb3を取り巻く環境そのものが課題だと感じています。Web3領域にいる人の中でも認識が曖昧な人がいますし、現在の状態が続くと正しい知識を持っている人がさらに少なくなってしまうと危機感を覚えています。
日本は世界に先立って規制を強化しましたが、個人的にこれは悪いことではないと思っています。現在、アメリカの方がWeb3領域の動きは速いですが、無理にそのペースに合わせるのではなく、自分たちのペースで進めていくことが大切だと思います。
どうしても、先に進んでいる国々に合わせようとすると、「Web3をやるためにはそこに行かないとできない」とか、「英語ができないと参加できない」などと考える人がいると思いますが、そんなことはありません。必ず日本でないとできないWeb3があると僕は信じています。日本の強みを活かしたWeb3の取り組みを進め、それが成熟化した時に世界へ進出していくという形もいいのではないかと考えています。「海外に行けばWeb3ができる」と思い活動するも、挫折していった人たちをみてきましたので、より強く思いますね。大事なのは自分たちのリズムをしっかり見定めることだと思います。
2023年の展望としては、人に価値を感じさせるプロジェクトやサービスが出てきて欲しいですし、それが現れたらすべてが変わると思います。投機的な側面だけではなく、実用という面に着眼点を置いて方向を示せるようものの出現がカギを握るのではないでしょうか。
2023年は規制面で先行していた日本が大きなチャンスを得られる可能性。自分たちのペースで進めていき、実用面に着眼点を置くことがカギとなる。
─すでに企業や有識者が主体となっているWeb3団体が多数ある中で、もし皆さんが学生ではなく社会人という立場で活動を行うとしたら、既存の学生団体とどのような差別化を図りますか?
井上:本業への熱量が低下した方へのアプローチを考えます。そういった人たちのリソースを手持ち無沙汰にしてしまうのは非常にもったいないですので、何かを生み出せるのではないかという大前提をもとにWeb3で変えられるかもしれない技術などの話をしたいですね。
Web3をやる上でも、社会人生活で培った組織のあり方や基礎となる部分は必要になってくると思います。そういった人たちをマッチングすることができたら、さらに動きが加速していくのではないかと感じます。ゆくゆくはWeb2企業の中にWeb3の思想が入っていけばいいなと思いますね。
差別化という点では、大企業の方など学生がなかなかアプローチできない層を招いて効率良く学べるような勉強会や講演会などを開催するといったところでしょうか。
雨蛙:立場が変わって活動をするとして、表面的な部分は区別することができても、根本的なところは学生でも社会人でも変わらないと考えています。
現時点では本当に「Web3の価値を多くの人に広げたい」という信念を持って行われているイベントが少ないと感じます。だからこそ、何回イベントを重ねようとも既存のWeb3の人たちしか集まっていないと、実際にイベントにスタッフやボランティアとして参加していて思います。
参加するにもハードルを設けるようなイベントもありますし、もっと外部の人を受け入れる気持ちがないと業界の成長はありえません。WeCreate3ではこのような課題を改善したいです。学生ではなく社会人という立場で活動する際には、まだWeb3に触れてこなかったような人たちにより知ってもらう取り組みを強めたいなと思います。
もし社会人という立場になって活動するとしても根本的な想いは今と変わらない。業界への参入障壁を下げ、新しい層を取り込まないと業界は成長していかない。
─今後の活動の目標や意気込みをお願いします。
井上:1回のイベント開催で終わるのではなく継続的な活動を心がけていきたいと思います。イベントを通じてみんなが学び成長できるコンテンツの提供や活動を行っていきたいです。あとは「みんなでWeb3の未来を創っていく」という想いを胸に活動を進めていきたいなと考えています。
雨蛙:WeCreate3では今後イベントを年に5回以上開催できればと考えています。WeCreate3の活動を通じてWeb3・メタバース関連の学生団体が増えてくれれば嬉しいですね。また、僕たちのイベントに参加してくださった企業様にもあらたな可能性を感じてもらえるよう取り組むことが目標です。学生団体の課題である「団体の存続」という点もしっかり考え、活動をしていきたいです。
WeCreate3の活動を通じてWeb3・メタバース関連の学生団体が増えてくれると嬉しい。
WeCreate3共同創業者
井上進哉
早稲田大学理工学部2年生。大学入学後、「マスタリング・イーサリアム」を読んだことをきっかけにWeb3業界での活動を開始。Web2から”eat to earn”プロジェクトを立ち上げるために活動中。早稲田NFT同好会代表。WeCreate3共同創業者。
WeCreate3共同創業者
雨蛙
中国からの留学生。2017年に来日し、現在上智大学理工学部三年生。2021年の11月から本格的にWeb3&Metaverse界隈に入り勉強をしながら起業し始め、2022年4月から東京を中心として活動を開始。同年5月に上智大学初のWeb3系団体“Sophia Creative”を創設し、11月に最初メンバーの1人として“WeCreate3”を立ち上げた。