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「アートが持つ本当の力」 NFTマーケットプレイスの可能性を探る「Ninfa」

イタリア発祥のNFTマーケットプレイス「Ninfa」のCTOが語る最新NFT事情

2023年1月20日(金)発売の月刊暗号資産3月号Vol.47より

設立の背景

Cosimo de Medici(コジモ・デ・メディチ、以下Cosimo):ニンファ(Ninfa)のアイデアは、ミラノで日本酒を飲みながらディナーを楽しんでいる時に生まれました。弊社のCEOは日本酒ソムリエでもあるのです。2021年1月のことでした。私たちは、テクノロジーとNFTの業界で成功するために必要なすべてのスキルを網羅した、才能ある共同創業者たちを集めました。

Brando(CEO)とPietroは、世界有数の経営コンサルティング会社であるボストンコンサルティンググループで3年以上の経験があり、小売戦略とデジタルトランスフォーメーションに大きな実績を持っていました。

私、Cosimo (CTO)は、サイバーセキュリティとスマートコントラクトの開発、特に若くて革新的なスタートアップに強い経験を持っていました。Carlo (営業責任者兼プラットフォーム責任者)は、情熱的なアートの専門家であり、アート業界全体にイノベーションをもたらすことを望んでいる著名なキュレーターでした。創業者は全員、ゲーム、収集品、またはアートに情熱を注いでおり、2017年初頭から暗号資産業界に参入しています。

2021年1月から6月にかけて、マーケットプレイス全体のアイデアの構想を練り始めました。2021年11月に会社を設立し、2022年初頭に最初の投資ラウンドを開始。2022年3月に3.5M€の評価額で535K€の投資ラウンドを終了し、2022年5月から6月にかけて公式マーケットプレイスをローンチしました。

Cosimoの経歴

Cosimo:私は中学生の頃から、ゲーマーとして、またハッカーとして、コンピューターに魅了されてきました。

その後、ロンドンに移り、経営学の学士号を取得し、最終的にサイバーセキュリティの修士号を取得しました。これが私のキャリアのスタートとなりました。

修士号取得後は、英国でも有数のサイバーセキュリティ企業で、サイバーセキュリティ・コンサルタントとして、基本的にはホワイトハットハッカーとして働き始めました。そして、2017年、採用されて間もなく、ブロックチェーンに投資し、ブロックチェーンについて学び始めました。コンサルタントとして2年間働いた後、私は退職し、ブロックチェーンセキュリティエンジニアとしてのキャリアを追求することを決意しました。イーサリアムはまだ黎明期で、クライアントのプロジェクト構築やスマートコントラクトの監査など、イーサリアムに精通した開発者としての経験が必要だったのです。

ブロックチェーン・コンサルタントとして2年間働いた後、ミラノ時代の古い友人の一人であるCarloと出会い、彼からBrandoを紹介され、ニンファの話を聞きました。このようなプロジェクトを始めるには完璧なタイミングと完璧なチームに思いました。その後、ニンファは誕生し、私は会社のCTOとして任命されました。

Ninfaの強み

Cosimo:Ninfa.ioは、イーサリアムブロックチェーン上のNFTによって実現されたデジタルアートやコレクターズアイテムを介してデジタルアイデンティティをパーソナライズするためのキュレーションされたマルチカテゴリーの小売業者です。仮想世界でクールになりたいユーザーのための場所です。

キュレーションとは、クリエイターがマーケットプレイスに参加し、作品を制作するために、私たちのキュレーションチームによる承認が必要であることを意味します。そのため、ユニークで質の高いアート作品を維持することができます。

マルチカテゴリーを用意したのは、アートだけでなく、コレクターズアイテム、デジタルファッション、アバター、デザインオブジェクトなど、さまざまなニーズをカバーするプラットフォームが個人には必要だと考えているためです。世界はどんどんデジタル化しています。特に新型コロナウイルスのパンデミック以降、多くの人々の交流や活動は、完全にデジタルで行われるか、デジタル技術によって何らかの影響を受けたり強化されたりしています。

私たちのデジタルアイデンティティは、ますます重要性を増しています。しか

し、デジタルアバターは特にNFT以前の課題があり、人格というより標準化されたアカウントになりがちです。そのため、個人はデジタル上のペルソナをさらに定義し、自分の趣味・嗜好・習慣をすべてデジタル上の同等物に伝える必要性を感じるようになるのです。

アイテム、アートワーク、コレクターズアイテム、PFP、あるいはデジタルファッションアイテムやメタバースオブジェクト/ランドを収集し、デジタルライフをさらにパーソナライズすること以上に、自分を表現する方法はないでしょう。このような理由から、私たちのビジョンは「物理的な境界を越えてアイデンティティを拡張する」ことなのです。

――ニンファがターゲットにしている顧客層はどのようなものですか?

Cosimo:キュリアス・マインド(好奇心旺盛)な方々です。デジタルアイデンティティとテクノロジーの最先端に身を置くことを望む人々やイノベーター、未来の先駆者たちなど、ターゲットは一種類ではなく、デジタルな自分をパーソナライズすることに意欲的な人なら誰でも対象になりえます。

ニンファはマーケットプレイスで発生した売上から、一定比率の報酬を得ます。私たちはフリーミアムモデルを採用しており、アーティストの参入障壁をゼロにするために、すべてのユニークなアート作品を固定価格で販売します。そして、付加的なサービスに対して課金します。例えば、アーティストがオークションで販売する場合は5%、アーティストが複数のエディションを販売する場合は10%、招待制のプライベートセールでは15%などです。

――ニンファの2023年の展開スケジュールをお訊かせください。

Cosimo:マルチエディション作成システムは、今年前半の主な焦点となる予定です。ゲーミフィケーション、ミッション、アチーブメントシステムは年内に展開予定で、ユーザーはマーケットプレイスを利用することでポイントを貯め、ランク、特典、商品、その他の素晴らしい報酬を得ることができます。

今年の次の計画として、高度なブロックチェーン対応のデジタルアイデンティティに関する研究開発に専念する予定ですが、現時点ではトップシークレットです。

現在の状況

――夏の創業から現在に至るまで、事業はどのような状況ですか?

Cosimo:わずか8ヵ月の間に、70カ国以上で活躍する500人以上のクリエイターを獲得し、30以上の海外ギャラリーをプラットフォームに迎え、合計550以上のNFTを創出することができました。

多くの国際的なイベントを訪問し、イタリア・ミラノのイゾラ・ファッション&デザイン地区に初のニンファブティックをオープンしました。デジタルアートとコレクターズアイテムに特化した200平方メートル以上のスペースは、愛好家、先見性、好奇心のある人々が集まる場所となっています。

過去4ヵ月間に6回以上の展示を行い、約4000人以上の来場者が訪れました。これからも、世界のスタイルの中心地ミラノで、デジタルコレクティブルを人々にお届けします。

――今年の暗号資産業界の冬、FTX事件はニンファにどのような影響を与えたのでしょうか?

Cosimo:ニンファには直接の影響はありませんでした。FTX破綻の発表月、業界全体の出来高はやや減少しましたが、深刻な事態にはならず、我々もすでに前月の売上高を更新しています。今回の一件は暗号資産・NFT業界全体の信用に影響を与えるリスクがあると考えていますが、時間が経てばすべて回復するでしょう。

NFT市場に対する意見

――日本市場をどのように捉えていますか?

Cosimo:日本は過去20年間、イノベーション、ゲーム、コレクションの世界的なエンジンとなっています。そのため、ニンファが最も注目している国際的な国の一つです。ニンファの創業チームは、アニメファンや浮世絵のコレクターなど、日本文化に強い情熱を持っています。日本人がアクションフィギュアやガチャポンなどの伝統的なアイテムのコレクションに多大な情熱を注いでいることからも、デジタルアイテムのコレクターになることが自然な流れであると考えています。

ニンファは、日本のNFT市場のリファレンスになりたいと考えています。ニンファのイタリアンスタイルと日本のイノベーションおよびテクノロジーに対するオープンマインドの間に強力な相乗効果のある橋渡し役となるのです。

――ヨーロッパ、米国、アジア、日本におけるNFT市場の地域性について、どのような印象がありますか?

Cosimo:文化やコレクション、芸術に対する考え方が異なるため、地域ごとに異なると思います。

現在、NFT市場全体の60%は、コンテンポラリーアートのように米国からのものです。もちろん、業界の発展に伴い、世界中にコレクターがいることが一般的になっていくでしょう。ニンファでは、イタリアからのトラフィックは20〜30%に過ぎません。私たちは国際的なプラットフォームだと思っており、これを誇りに感じています。私たちの使命は、EUやアジア市場にとって、キーポイントとなることです。

NFTのアーティストについて

――日本のアーティストで注目している人はいますか?

Cosimo:すでに我々は日本の何名かのアーティストと仕事をしています。夢のような話ですが、巨匠・村上隆氏が我々のプラットフォームに登場することになりました。写真家、画家、デジタルアーティストなど、日本のアーティストであればどんな方でも歓迎です。また将来的に、日本のブランドやアートギャラリーが、日本でのさらなる展開のために、私たちとコラボレーションしてくれることが叶うと嬉しいです。

NFTの動向について

――2023年のトレンドやNFTの今後について、どう思われますか?

Cosimo:2023年は、NFTにとって信じられないような年になると思います。おそらく、さまざまなブランドや現実世界からのアプローチがあり、より多くの産業にわたってこの市場が拡大することでしょう。

私たちがニンファでやろうとしていることは、高度にキュレートされたユニークなアイテムを幅広く提供すること、そして使いやすいリテールプラットフォームを作ることです。暗号資産の愛好家から伝統的なコレクターまで、誰もがNFTへの道を見出すことができるように。

私たちは、ユニークなアイテムから、より入手しやすいマルチエディション、アートからコレクターズアイテムまで、さまざまなものをコレクターベースに提供したいと考えています。デジタルコレクティブルを大衆に提供するためには、できるだけ包括的で、さまざまな価格帯とさまざまな種類のアイテムを、安全に管理された方法で提供する必要があります。もちろん、ユーザーの利便性を高めることも重要です。そのため、例えばニンファでは、NFTをクレジットカードで購入することもできます。

――日本の暗号資産業界はガラパゴス化していると言われていますが、もし日本で新しいNFTプロジェクトを立ち上げるとしたら、どのようなプロジェクトで、どのような戦略を立てるのでしょうか?

Cosimo:暗号資産関連事業が多くの市場でガラパゴス化するのは典型的なことです。しかし、私たちはデジタル領域で自分の個性を伸ばそうとする洗練された日本の方々のために、日本のリファレンスマーケットプレイスでありたいと願っています。

私たちの計画の一環として、東京(渋谷)にキュレーションされたニンファのブティックをオープンし、デジタルアートとコレクターズアイテムに関するイベントやパーティーを、年間を通して開催する予定です。面白いことに、うちの社長は夜な夜な日本語の授業も受けているんですよ(笑)。

また、日本のブランド(ファッションからコレクターズアイテムまで)と提携し、プラットフォームを通じてNFTの専用コレクションをドロップすることも考えています。同時に、日本のベンチャーキャピタルがニンファに投資し、ニンファと日本との関係をより強固にするために、私たちのビジョンを持続させてくれることも求めています。

――日本市場に訴求したいポイントは何ですか?

Cosimo:ニンファチームは、ポケモンカードを集め、アニメを見て、ニンテンドーやプレイステーションで遊んで育ちました。私たちは、日本のテクノロジーとコレクターズインダストリーによって育てられています。

私たちは、日本の文化、革新的なアプローチ、スタイル、アート、デザインに感心しています。だからこそ、私たちはその一端になることを心から望んでいるのです。日本が私たちに与えてくれたものを返す方法として、デジタルコレクティブルを日本の皆様に提供させていただくことを目指します。

Ninfa CTO
Cosimo de Medici – コジモ・デ・メディチ

1991年、イタリアのフィレンツェの名家であるメディチ家の家系に生まれる。4ヵ国語を操り、10代の頃からゲーマー、ハッカーとしてコンピュータの世界に触れる。ロンドンの大学にて経営学の学士号、サイバーセキュリティの修士号を取得後、英国で最高のサイバーセキュリティ企業でホワイトハッカーとしてのキャリアをスタート。2021年、NFTプラットフォームであるニンファ(Ninfa)のCTOおよび共同創設者に就任。ブロックチェーン技術のセキュリティエンジニアとして活躍。