2020.03.09
2019年7月号-ガリア・ベナルツィ氏独占インタビュー
2019年5月21日(火)発売の月刊仮想通貨7月号Vol.16より
スマートトークンがつくる世界の未来
Bancorは、世界最大の分散型流動性ネットワークで、分散型取引所と同様の機能を備えている。分散型取引所との主な違いは、売り手と買い手のマッチングではなく、ブロックチェーン上のスマートコントラクトに対して注文が自動的に処理されることだ。 トークンを発行しているプロジェクトであれば、Bancorのネットワーク上でそのトークン専用の新しいリレートークンを発行することで、ユーザーのウォレットから直接、公平で効率的なトークンの交換を実現できる。
Bancorに上場しているトークンは、ETH、DAI、BNBなどで、8000以上の取引ペアで即座に交換が可能。Bancorのテクノロジーは、ブロックチェーンプロジェクトからトークンホルダー、アフリカ、アジアなどの現実社会に至るまで、世界中の組織や人々に影響を与えている。
Galia Benartziは、Dartmouth Collegeで比較文学の学士号を、SAIS Johns Hopkinsでエネルギー政策を専門とする国際関係および国際経済学の修士号を取得した才女。さまざまな企業のスタートアップに参加し、2017年にBancorを共同設立。2018年にForbes誌上においてヨーロッパの技術女性50人の一人に選ばれた。分権化されたテクノロジー、女性のエンパワーメント、意識、自然な健康、植物に情熱を注いでいることで知られている彼女は、Bancorを通じて世界をどう変えていこうとしているのか?
─Bancorは、一般的な起業家が考えるような「お金を儲けたい」とか「世界一のサービスを作りたい」という思いから生まれたわけではないように思えます。あなたやBancor チームは現在の貨幣制度や社会にたいしてどのような問題意識をもっていて、どう変えていきたいと考えていますか?
「私の創業チームは以前、地域通貨イニシアティブのための技術を構築しました。
最も成功したプロジェクトの1つが、イスラエルで使用された最大の代替通貨になりました。このコミュニティは「Hearts」と呼ばれる通貨を発行し、通貨ウォレットと信頼出来るP2Pマーケットプレイスを組み合わせたモバイルアプリです。そのコミュニティは数年間に渡り毎日、ジュエリー、アパレル、家庭・子ども用品やライフスタイルサービスを含む数百の取引を作り出し、ドル換算で数百万ドルの価値を持つようになりました。
間もなく、近隣のコミュニティで他の通貨が発行されたため、これらの店舗でも相互に交換できるようになると、自分たち以外のネットワークで新しい商品やサービスが利用可能になり、さらに大きな利用価値が得られることが明らかとなりました。しかし、これらの通貨はユーザーにとって本当の価値を生み出していたにも関わらず、流動性に必要な取引量を達成するには小さすぎるという潜在的な天井がありました。これこそが我々がユーザーにより作られた通貨の変曲点をまだ見ていない主な理由です。
Bancor 資産取引における流動性の課題を解決し、ユーザーにより作られた通貨のロングテール現象の解消に重点を置いています」
─Bancor とはどのようなプロジェクトですか?
「1990年代の後半以来、バンコールチームはインターネット上でさまざまなプロダクトを作り続けてきています。2011年にビットコインと出会い、ユーザー生成型通貨の可能性を模索し始めました。
2016年の夏、分散型のグローバルエクスチェンジの基礎を築く暗号通貨のための新しい規格を作るために、階層的な金融システムを作ることを目標として、私たちはバンコールに取り組み始めました。それは、自律的で、スプレッドがなく、取引先リスクもなく、どのような資産に対しても継続的な流動性を提供するものです。そして、インターネットがコンテンツに対して行ったように、通貨のロングテールを可能にするものでもあります」
─BancorProtcolの仕組みとメリットを教えてください。
「Bancorの基本的な考え方は、運営母体がトークン保有者と交換可能な準備金を用意しておくという考え方です。BNTはEthereum をベースに作られたトークンです。発行する際に準備金として親通貨であるEthereumを担保しています。仮にBNT保有者がそのトークンを手放したいと思ったとき、BNTを欲しがる第三者がいなくても運営母体であるBancorがいつでも買い取ることを約束していま
す。このようにBancor Protocolに準拠して発行されたトークンのことを、スマートトークンと呼びます」
─2018年にはBancorXがリリースされましたね。数ある仮想通貨のなかで、EtheriumとEOSを選んだのはなぜですか?
「BancorXは、ユーザーが取引所に資金を入金せず、買い手と売り手のマッチングなしでEthereumベースのアセットとEOSベースのアセットを自動で交換することができるものです。誰でも、Ethereum トークンまたはEOSトークンをBancorにデポジットすることで、Bancorのネットワー
クに統合することもできます。
BancorX は、BNTがEthereumのネットワークからEOSのネットワークに流れてたり、再び戻ることによってトークン交換の際の煩雑さを和らげ、ユーザーエクスペリエンスをブロックチェーンによらず統一し、システムの継続的な非中央集権化と利用可能性を確保することを目指します」
─Grassroots Economicsと提携してケニアで行っている地域通貨(community currency) 発行の取り組みについて教えてください。
「Bancorチームは、2018年年末にBancorのWeb Appをリニューアルしました。Bancorでは、単一のインターフェースでEthereumとEOS間のトークンを中央集権的な取引所に頼らず交換することができます。また、ケニアでの地域通貨導入に関しては、新たなデータを入手しました。2018年12月も、さまざまなサードパーティプロジェクトでBancorProtocolを用いたトークンの変換機能が実装されました。そして、LiquidEOSはEOS Block Producerランキングで1位を獲得しました」
─ブロックチェーンを使って地域通貨を発行するメリットはどのようなものですか?
「私たちはケニアで5つの村のトークンに対してスマートコントラクトを導入しました。伝統的な人間主導の注文書から、ブロックチェーン上の自動マーケットメーカーにシフトすることで、市場の乱用や円滑な価格変動を最小限に抑えることができます。これは、金融市場の分散化とデジタル化の次のフェーズです」