2021.03.01
先月26日、米国証券取引委員会(SEC)の審査部門が、暗号資産(仮想通貨)を始めとしたデジタル資産を扱う事業者を対象にコンプライアンスに関する注意を呼びかける文書を発表した。
現在、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)へのニーズは高まっており、従来の金融機関でも暗号資産を導入する事例が出てきている。
このような環境の中、暗号資産ブローカーは顧客に暗号資産関連サービスを提供しつつ顧客資産を守る責任の重大さを再認識する必要があるとSECは説明した。
今回SECの審査部門によって発表された文書では、暗号資産やデジタル資産に関する業務を行う際に考慮すべき枠組みの概要が明記されている。
また、暗号資産のカストディや取引記録を始めとする各暗号資産関連業務に焦点を当て、SEC審査部門は暗号資産ブローカーや投資アドバイザーに対して慎重に手続きを踏むように注意勧告をした。
さらにSECの審査部門は、特に暗号資産ブローカーに対して、AML(マネーロンダリング対策)の不備を懸念しているようだ。発表された書面には「ブロックチェーンテクノロジーの匿名性はAMLの履行に関して、独自の課題を持っている」と記載されている。
審査部門の職員によってAMLの手続きを更新していないブローカーが確認されたことで、懸念が強まった形と言える。
また、審査部門はブローカーに対してAMLの管理などといった顧客保護の強化を推進するよう呼びかけるとともに、今後もコンプライアンスを精査していくと明記した。
SECの審査部門は従来の枠組みで暗号資産投資を審査していることが多いが、新しい枠組みで審査している部分も見受けられる。例えば、秘密鍵の安全に保護しているかどうかの審査は従来の金融市場には存在しなかった概念だ。
暗号資産へのニーズは今後さらに拡大する可能性を秘めているが、より多くの顧客が暗号資産を安全に購入・保有するためには未だ規制が不十分な点もある。
暗号資産市場に大きな影響を及ぼす米国においてどのように規制整備が進められていくか、引き続き注目していくべきだろう。
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